ある経営メーカー海外現地法人 社長Aさんと工場長Bさんの話
先日、高校のOB会があり、参加してきました。主賓はあるOB経営メーカーの役員かつ中国現地法人の社長Aさんと、部下の工場長Bさん。その方々のお話聞いて、なるほどなと考えたことについて書きます。
もともとそのメーカーさんは中国に数カ所生産拠点をもっており、その生産拠点がささえてきました。しかし、近年の中国や近隣諸国の状況の変化によって、そのある中国拠点工場は生産性が低下しており、それを懸念した本社は、中国の生産拠点を縮小するという判断をしました。生産拠点を縮小、ゆくゆくは閉鎖するために、数年前にAさんは、その中国現地法人に、社長として就任したそうです。それまでにも、出張ベースで拠点従業員と関わってきたAさんは、拠点や、現地従業員への思い入れもあり、内心納得のいかない気持ちだっただろうと思います。
Aさん着任後の予想外の展開
しかし、Aさん着任後、予想外のことが起こります。はじめは一般従業員として業務に従事してきた、勤続16年のBさんが、関係各所に働きかけ、拠点の生産力は徐々に大幅拡大。5年ほどで、当初縮小の方向であった拠点は、メーカーで最も収益を上げる現地法人となったのです。そんなドラマのようなことが実際に起こり得るのだなと、本当に感心しました。歴代最年少で工場長に昇進したBさん、一体どういう手法をとったのか?そんな方とお会いする機会もなかなか無いと思い、聞いてみました。
工場長Bさんはどんな方法で工場の収益をV字回復させたのか?
Aさん、Bさんのお話し曰く、難しいことは何もしておらず、本当に地道に、関係各所と腹を割って話していった、ということです。Aさん曰く、「いくら経営手腕にすぐれたトップがぽっと出できたところで、結局は現場のものが奮起しないといけない。Bさんは、本当に地道に一人一人と向き合って、話を聞いて、一人一人の意識を変えていった。これは、これまで長く務めてきたBさんにしかできないこと」と仰っていました。皆さん、勤続16年でこれまでのBさんの働きを間近で見てきた方です。そんなBさんが腹をくくって、現在の工場を再生させようと働きかけたことに、協力する気持ちになったのだそうです。
地道で愚直な働きかけ
そして、工場長Bさんの意向を聞き、本社に働きかけたのが、現地法人社長のAさんです。Aさんは、日本人ですが、学生時代から中国語を学び、これまでも同社と現地法人で長く勤続し、同工場で働く人たちのことも理解していたのだろうと思います。ですから、AさんとBさんは連携することができて、結果的に、Aさんの社長着任後、拠点工場の収益はV字回復したのだろうと思います。地道な努力—この言葉、とても印象に残りました。
人を動かす力、それは、特別に教育を受けた人だけが成し得る事ではなく、地道に活動をしてきた人にこそ、備わる力なのかな、と感じました。そして自分自身に照らし合わせて考えてみました。私は今、何か仕事に従事しているわけではありません。しかし、子育てや、地域活動、また親族内で働くことは多くあります。そういった場所で、何らかの意思決定にかかわる際、自分の発言力を高めることには、この地道な働き、というのは役立つと感じました。つまり、あの人の考えだったら、聞こうかと思ってもらえる人間なるには、そのためには、今、自分ができること、私が何かをすることで誰かしらが助かったと思ってもらえること、そういったことを日々アンテナを張って行っていくことで、結果的に自分自身の発言力を高めることになるのではないかと感じました。
そんなことを考えた夜でした。